宮武大悟(浄土真宗本願寺派僧侶)

逡巡し立ち止まってしまう、言葉が見つからず言い淀む。気がつくと、まわりにこうした人間的な振る舞いを見つけることがとても難しくなりました。まるで、物事を断定的に捉えることが現代の象徴であるかのように勘違いし、まわりに流されることは自分の存在を否定されているかのように錯覚して。

けれども、横断歩道をすたすた歩く妹を電信柱の陰からおろおろ見送る少女に、だくだくと流れに巻き込まれて留学生たちのママとなっていく20代の女の子に、そのぐずぐずともつれた思いにこそ私は深く共振しています。そして読み終わったとき、年下のちはるが人間として私より少し、大人であることに気づかされてしまいました。これから大人の女性として、もつれたまま、そのままの笑顔があることを見せて下さい。ささやかに願っています。