カケラバンク 櫻井幹也(ミュージシャン)

人と向き合う事は疲れる。

だけど向き合う事でしか得られない暖かな喜びがあると一度知ると、僕らは喧嘩も言い争いも苦にはならなくなる。

この一冊も「玉城ちはる」と向き合うという点では似ていた。

読んでる途中で気付いてた。
あっこれは疲れるぞって。

でも引き返せない所まで「玉城ちはる」というの森の奥深くまで踏み入れてしまったから、疲れてもその先にあるだろう「未知なる暖かな光」を信じ、「玉城ちはる」と向き合う事を決めた。

結果、見たくないから放置してた自分の一部とも向き合った。

彼女の家族との細かな思い出話はフラッシュバックを喚起し僕の胸を締め付けた。

でも、家族を作る側の年齢に達した今、そこを「おさらい」する事は、新しい優しい家族を作る為には必要なんだと教えられた。

幼少期見上げてた両親と同じ年齢に達した僕らには今こそ必要なんだと教えられた。

読み終えた時、やはり疲れた。
でも、それを超える「未知なる暖かな光」もやはりあった。

明日という知らない所へ踏み出す事は、必ずや知らない喜びを知れるんだと教えてくれた。

「玉城ちはる」はそれを見事三行でこう表現している。

「彼がいて自分を知り、彼がいて自分を嫌いになり、彼がいて誰かを愛し愛されることを知り、つらく苦しく腹立たしく情けない空しさの後には幸せがあると私は知ったのです。」